デジタル画像の原本性

静止画が証拠になる場合、その画像が加工されているかどうかはひとつの問題となるかと思います。具体的には明暗や色の変更、切り抜き、トリミングなどです。以前、写真の改ざんを行っているかどうかを判別するのは容易である点を書きました。今回はその原本性をいかに証明するかということについてです。

写真の原本性というと、Exifデータを検証することなどがまずは思いつきます。撮影日や加工日、加工したソフトウェアや画像サイズ、写真によっては撮影したカメラや著作権者もExifデータ内に残っています。加工を行ったデータは痕跡として残ります。しかし、Exifデータはそれ自体も改ざん可能なため、本当に画像の原本性を示すには不十分です。

全てのカメラが対応しているわけではありませんが、写真をRAW形式で撮影、保存することは原本性の担保につながります。RAW画像とは写真の画素ひとつずつが色情報しか持たない状態の形式です。純粋に言えば画像でもないのですが、それを対応するソフトウェアで画像を再現することが可能です。また、そこからソフトウェア上でパラメータを調整して画像ファイルへ出力することをフィルム写真時代の行為になぞらえて「現像」と呼ばれています。通常のjpgファイルは8bitですが、RAWデータは12から14bit、多いものだと16bitのデータを持っているため、最初からjpgで撮影するよりも階調性、加工性に優れ、特に作品性を強く出すプロには好んで使われています。最近ではiPhoneや一部のandroid端末のようなスマートフォンでも専用のアプリケーションをインストールすることでRAW撮影ができるようになっています。

このRAWファイルは拡張子がカメラメーカーごとに分かれており(Nikonだと.nef、Canonだと.cr2)、ソフトウェアが対応していないと同じ拡張子でも表示、現像できません。前述した理由から、一般的にはRAWファイルからjpgに現像することができても、jpg画像からRAW形式に戻すことは不可能です。そのため、現像前のRAWファイルはネガフィルムのようなものと言えますので、改ざんが加えられない原本性が担保された状態ということができます。

しかし、あまり知られていないことですがソフトウェアメーカーのAdobeが提唱した.dngの拡張子のRAW形式についてはjpg画像から可逆的に生成することが可能になっています。そのため、当該ファイルは一見、RAWの性質を持ったものと同様に見えてしまいます。ただ、もともと無いデータから情報を作ることは不可能なため、前述した現像ソフトウェアを使用することでデータの不備が判明してしまいます。