電子カルテの定義

一口に電子カルテと言っても、証拠保全の現場では時に患者側と病院側で食い違いが見られます。現場に慣れていない裁判官も同様です。患者側はカルテのほか、看護記録、検査結果記録や部門システム、オーダー、レセコン、それらをまとめて電子カルテと指していることが多いようです。

一方、病院側は電子カルテと言ったときに当該カルテ(診療録)部分だけを指すことがほとんどのようです。病院の規模にもよりますが、カルテと検査システム、またオーダーなどは別のソフトウェアが管理し、電子カルテのソフトウェア上では単にそれらを参照しデータだけを読んでいる、というシステムが一般的です。この電子カルテ全体のシステムについてはまた別の機会に書こうと思います。

病院側は患者側の定義している電子カルテの意味を汲み取ればよいのですが、しかし、病院側もずっと専門用語として使っているからでしょうか、それができずに両者の意味が食い違ったまま証拠保全が進行してしまうことがあります。

例えば、裁判官が「この電子カルテに更新や削除の履歴が残るか」と質問した際に病院側は「すべて残ります」と回答したとします。そのときに裁判官が電子カルテをシステム全般を含んだものを想定していた場合、後に「このレセプトの控えに更新履歴がないようですが」などと質問することになります。

このように一般的な単語と専門用語の意味が違うことは医療のみならず、他の業界でもしばしばあります。例えば法律用語だと『事件』『善意、悪意』カメラ業界だと『一眼レフ』の定義などがあります。いずれにせよ、この相手の意図を察することができないことによる食い違いが医療問題の根っこの部分になっていると言うのは穿ち過ぎでしょうか。