証拠保全の対応と拒否
専門外の人に証拠保全の制度を説明する機会は私ですら何度もあることですので、専門にされている弁護士の方々や裁判所の方はもう数え切れないほど証拠保全について説明の機会があることでしょう。しばしばニュースで報道される段ボール箱を運び出す映像を想起されること少なくないのですが、証拠保全は民事ですので強制力は刑事事件ほどありません。
それを現場で相手方に説明する裁判官の苦労も忍ばれます。基本的に当日中に行う手続きですので、相手方の担当者がどれだけ制度を理解してもらい、協力を得られるかは裁判官の力量にかかっているケースもあります。
ある程度の規模の病院となると証拠保全の現場は医事課のスタッフが担当することがほとんどです。一方、小規模病院・中小企業では院長や代表取締役が応対するケースもあります。そのような所では稀にワンマン経営(に見える)の相手方が裁判官に怒りだすこともあります。訴えてやる、と言い出したこともあります。
制度上、強制力はないとはいえ正当な理由なく証拠保全を拒否した場合は争いのある部分について申立側の言い分が本訴で認められやすくなるという通説があります。また証拠保全の段階で情報を開示することで後に改ざんの有無について不要な争いが生じなくなるため相手方のメリットにもなる、という点も合わせて裁判官は現場で説明します。
しかし、それで相手方の怒りが収まらないこともたまにはあります。ごく稀にですが説明があったにも関わらず証拠保全自体を拒否されて検証不能で終わった経験もあります。その場合、本訴以降どのようになったかは当事務所の性質上、関わりえないところですが、どの程度上記通説が採用されているのか、行方は非常に気になるところです。