労働案件、パソコンの行方

労働案件の証拠保全では被災者が使っていたパソコンのありかがひとつ当日のテーマになります。労働時間を記録するタイムカードがなかったり、あってもタイムカードを切った後の残業が状態化している場合があるからです。使用していた程度にもよるものの、オフィスワークであれば現代ではパソコンを使わない仕事も少なく、そのために被災者の使用しているパソコンには多くの情報が詰まっています。被災者のパソコンのありかについて、これまでカメラマンが現場で経験してきたケースを紹介します。

被災後、使っておらずそのまま

当然ですが、最も理想的な状態です。被災直後の様子がそのまま残っているため、非常に多くの情報が取り出せます。最も、この状態で残っている場合は少なく、私も数えるほどしか経験がありません。こうしたケースでは会社側も問題を認識していることもあり、証拠保全自体がスムーズに進行するように感じます。

引き継いで別の社員が使っている

上記の状態ほどではありませんが、まだ情報が多く残っています。こうしたケースでも、後任者によってワードやエクセルなどのファイルが上書きされているのか、あるいは別ファイルで新しく作っているのかで情報量は異なります。当然、後者のほうがよい状態です。また、メールなどは上書きなどはできないため、そのままデータを記録化できます。

誰が使っているか不明

現場が慌ただしかったり、社内が散乱していたりで管理が行き届いていない会社でごく稀にありました。もちろん、社員の誰かがその在処を知っていないか、尋ねてもらうことになるのですが、時間の制限がある証拠保全では当日中の作業を諦めて他の方法をとる必要があることもありました。

初期化して後任が使用中

データを初期化され、しかもその後に後任が使っている、となると当日中には記録化がほぼ不可能になります。復元作業を行うという方法はありますが、期日中に終わる作業ではありませんし、確実にデータが復旧する保証もありません。そもそも、会社の協力を得るのが難しいこともあります。しかし、初期化といいつつ、データが残っている場合もありました。会社側の認識不足で、実は初期化は行われておらずWindowsのユーザーアカウントを新しく後任者用に作っただけであったり、データ自体は引き継いでいたりするケースがありました。詳細を尋ねないとわからないことです。

そのほか、リース品だったため、リース会社に返品してあった、シンクライアントシステムである、など、特殊な事例もあり現場で状況に応じて対応します。いずれにせよ当日確認しないと話が進まないわけです。後任者が使っている可能性も考慮すると、被災から証拠保全期日までの期間は早いほうがいいと言えます。