裁判所の資料を読む

裁判所のウェブサイトを訪問すると、各種案内や手続きについての情報のほか、多くの資料が公開されていることがわかります。特に医療事件については1頁割かれています。統計の最新は平成29年です。もう少しすれば平成30年度分も公開されるかもしれませんが、いずれにしろここ数年の数字はどの年も近いものになっており、これまでの流れに大きな変化はなさそうでしょう。

統計によれば認容率{判決総数に対して認容(一部認容を含む。)件数の占める割合}はここ数年横ばいで、20%ほどです。通常訴訟は80%ほどの認容率があり、この数字だけを比較すると、医療訴訟では患者側は勝つのは難しいのか、という判断になりそうです。しかし、見落としてならないことは認容率には和解が除かれている点です。

別の資料によれば和解は全体の約50%ほどです。終局区分が『その他』など、不明なものもありますが、判決に至ったものは全体の3割強です。そのうちの認容率が20%なので、大まかな計算ですが、全体では6-8%ほどです。反対に、棄却は全体の22-24%ほどになることになります。

これは病院側の過失が明らかな場合、専門的知識を持っている側である病院が積極的に和解に応じているということもあるのではと思います。もちろん、医療事件はその診療科によって難易度も種別も大きく性質が異なるため、一括りで語るのも雑な印象も受けます。ひとつの事件が判決の段階になってからと言って、患者側の勝てる確率が6%ほどしかない、というわけではありません。あくまで全体の数字は全体のもので、個々の事例の結果はこの確率に左右されるものではないのは当然です。

この統計からは医療が専門性の高いものであるという当たり前の性質が裁判所での特殊性にも表れているように見えます。