証拠保全におけるカメラマンの役割
証拠保全においてはカメラマンはあくまで補助者の立場です。費用が発生するのに対して、カメラマンに依頼するメリットがあるかどうか、不明なこともあるかと思います。そこで、カメラマンが証拠保全で果たせる仕事を簡潔にまとめてみます。
1.カメラマンとしての複写作業
カメラマンとして一般的に最もイメージされる作業かと思います。複写はカメラマンの基礎でもあるので、基本的にプロを名乗っている限りどのカメラマンでも対応できるかと思います。
ただし、証拠保全手続きに対する知識がないと1カット撮影するにも時間がかかり過ぎて、撮影量によっては時間内に撮影が終わらない可能性があります。絵画などの精密な複写とは違う点を見極め、素早くかつ、使われる場面や納品時までを考慮した撮影を行う必要があります。
2.電磁的記録の保全作業
パソコンやネットワーク内にあるデータを整理、保全、記録化する作業です。
この作業についても単にパソコン、ネットワークなどの最新の知識が求められることに加え、証拠保全手続きの性質を把握した上で時間内に、状況によっては撮影と並行して作業を行う必要があります。このデジタル作業については細かく書くとキリがないので、いずれ別記事にする予定です。
3.事務作業
証拠保全では単に資料を保全するだけではなく、保全前に下作業をする必要がある場合も少なくありません。例えば、第三者の個人情報のマスキング、資料内の検証対象期間の絞り込みなどです。
通常、こういった作業は検証と並行して書記官や代理人、相手方が行うことが多いのですが、量が多い場合はもちろんその限りではありません。
4.証拠の指摘や保全方法の進言
カメラマンに最も差が出るのがこの点です。相手方も気づいていない、あるはずの証拠や、検証物目録とは単語が必ずしも一致せずとも同じ意味の書類が存在することを進言し、相手方にそれを提出してもらいます。その進言を行うかどうかについての判断も、事件の争点との関連性や証拠保全の時間内の優先順位などを考慮して行います。例えば医療現場の書類であれば事件と関係のない書類まで全て相手方に提出させれば到底、時間内では終わらないことが予測されます。それでも必要な書類については進言した結果、後日、任意提出となることもあります。個人的な話ですが、特に進言するべき資料がなかった現場でも「いてくれて安心した」と言われることは非常に光栄に感じます。
証拠保全の性質からどのような方法での保全がよいか提案することもあります。例えばコンピュータの場合、画面を撮影するべきか、電磁的記録を複製、あるいは書き出しをすべきか、など判断が必要になることは頻繁にありますが、全てこのような判断は現場経験と証拠保全の知識に裏付けされます。
以上、証拠保全の現場でカメラマンが果たす役割でした。他にも細かい役割はあるかもしれませんが、大きく分けるとこの4つに集約されると思います。これらの仕事をどれだけ果たせるかは、証拠保全のカメラマンとしての能力に直結します。上記役割を検討しつつ、カメラマンに依頼すべきかの答えを出すのが良いかと思います。